食事からコンディションを整える:不足しやすい栄養素とその補い方

パフォーマンスに関わる栄養・休息のススメ

アスリートにとって食事は、筋肉量の増加やケガの予防、リカバリーに重要な役割を果たします。パフォーマンスを高めるためにも、各栄養素がパフォーマンスにどのような影響を与えるかを理解し、必要な栄養素を摂りやすい食品を選び、戦略的に栄養摂取することが重要です。本記事ではアスリートに特に意識して摂取してほしい食事や、それに含まれる栄養素をパフォーマンスやコンディション向上の観点で目的別に解説していきます。

アスリートが不足しやすい栄養素

食事から摂れる栄養素はいずれも健康を維持するためには欠かせませんが、アスリートは日々厳しいトレーニングや試合で身体的な負荷が高い分、特に意識して積極的に摂らなければ不足する可能性がある栄養素がいくつかあります。効果的にフィジカルを強化するためや、大事な試合にベストなコンディションで試合に臨むためにも特に重要な栄養素について、その種類と各栄養素を多く含む食品について以下の表にまとめました。

栄養素 当該の栄養素を多く含む主な食品
糖質 ごはん、パン、麺
たんぱく質 肉、魚、卵、納豆、豆腐、牛乳、ヨーグルト、チーズ
脂質 バター、バラ肉、鶏肉の皮、オリーブ油、いわし、ぶり
カルシウム 牛乳、ヨーグルト、チーズ、納豆、骨ごと食べる魚、小松菜
レバー、牛肉、カツオ、あさり、納豆、小松菜
亜鉛 牛肉、レバー、かき、いか、卵黄、チーズ
ビタミンA レバー、卵黄、にんじん、ピーマン、ほうれん草、かぼちゃ
ビタミンB₁ 豚肉、納豆、豆腐、たらこ、鮭、玄米
ビタミンB₂ レバー、ぶり、牛乳、ヨーグルト、チーズ、納豆
ビタミンC ブロッコリー、ピーマン、パプリカ、ゴーヤ、キウイ、オレンジ
ビタミンD 鮭、ぶり、カレイ、卵黄、きくらげ、干ししいたけ
ビタミンE うなぎ、ぶり、かぼちゃ、アボガド、アーモンド、落花生
ビタミンK 納豆、小松菜、ほうれん草、にら、キャベツ、ブロッコリー

筋肉量の増加にはたんぱく質とビタミンB6

筋肉量の増加を目指す場合は、たんぱく質が必要です。たんぱく質を十分に摂取するためには、たんぱく質を多く含む主菜(肉、魚、卵、大豆・大豆製品など)を、毎食必ず食べるようにしましょう。料理の時間がなかなかとれないという方の場合、食事に卵と納豆を取り入れたり、一度の料理で主菜を多めに作り置きしておくと、手間をかけずにたんぱく質を摂れるのでお勧めです。
主菜のほかに牛乳・乳製品も筋肉量アップに必要なたんぱく質を多く含みます。補食をコンビニなどで購入する場合は、サラダチキン、ちくわ、笹かまぼこ、豆乳、ヨーグルト、低脂肪牛乳などを選ぶとよいでしょう。また、たんぱく質が体内で筋肉に合成されるためには、ビタミンB6が必要です。ビタミンB6は鶏肉やバナナに多く含まれているので、たんぱく質と一緒に摂ることを意識してみてください。
しかし、ひとつ注意していただきたいのは「たんぱく質は多く摂れば摂るほど筋肉量アップに効果があるわけではない」ということです。過剰摂取は身体に悪影響を及ぼす可能性もあるため、たんぱく質の摂りすぎには注意しましょう。

持久力強化・貧血予防に役立つ栄養素

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鉄は貧血予防のため積極的に摂取していただきたい栄養素です。特にアスリートは、運動によって酸素を運搬する必要性が増加したり、ジャンプなどの足底への刺激によって赤血球が破壊されたりすることが一般の人よりも多いため、鉄の必要量が増加する傾向にあります。そのためアスリートは意識的に鉄を摂取しなければなりません。
そして鉄は持久力向上にも効果的です。貧血予防と持久力向上を食事から得るためには、鉄だけでなく、鉄と共に相互に作用するたんぱく質、葉酸、ビタミンB12、亜鉛も摂取する必要があります。またビタミンCも併せて摂取できると、鉄の吸収を助ける働きをしてくれるので、さらに効果的な食事になるでしょう。
これらの栄養素を摂取するためには、動物性の主菜を毎食摂り、赤身の肉や魚も積極的に摂りましょう。レバーはたんぱく質こそ赤身の肉・魚ほどは含まれていませんが、葉酸、ビタミンB12、亜鉛を多く含むため、市販のレバーを含む焼き鳥を購入し、ほかの主菜と組み合わせるのがおすすめです。また、牛乳とプロセスチーズにはたんぱく質とビタミンB12が多く含まれているので、食事や補食に取り入れましょう。鉄の吸収を助けるビタミンCを多く含む野菜を毎食摂り、柑橘系の果物や100%ジュースを食事や補食に取り入れることも有効です。

食事からできる骨折予防

アスリートにとって競技中のケガは、パフォーマンス向上を妨げるため、できれば避けたいものです。中でも骨折は、長期の離脱を余儀なくされてしまいます。しかし、日々の食事から骨折の予防につなげることは可能です。
骨の主な材料となるカルシウムは日本人が不足しやすい栄養素のひとつです。骨は日々破壊と形成を繰り返していますが、骨の形成に必要な栄養素の摂取が適切でないとその破壊と形成のバランスが崩れ、骨密度低下につながります。カルシウムを多く含むものとして、牛乳・乳製品は広く知られていますが、牛乳・乳製品は脂肪も多く含む食品なので、体脂肪の増加を防ぐため低脂肪や無脂肪タイプを選ぶとよいでしょう。
牛乳・乳製品のほかに、缶詰などの骨ごと食べられる魚、豆腐、納豆などの大豆製品、小松菜、水菜、チンゲン菜、切り干し大根などを取り入れるようにしましょう。それぞれビタミンD、ビタミンK、鉄を多く含み、骨の形成に必要な栄養素なので、カルシウムと一緒に食事に取り入れてほしい食品です。
また、たんぱく質は骨の成分であるコラーゲンの材料として必要ですが、一方でたんぱく質の過剰摂取は骨密度低下の原因となる可能性があるため、摂りすぎには注意しましょう。併せて、食事量自体が少ないことによるエネルギー摂取量の不足は、十分にカルシウムなどが摂取できていても、骨にはマイナスとなってしまいます。無理なダイエットなどによる欠食や不必要な食事制限は避けましょう。

筋肉のダメージをリカバリーするための栄養素

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ビタミンDの不足と筋肉系のケガとの関連が研究で報告されています。一方でビタミンDはアスリートが意識して摂取しないと、不足しやすい栄養素のひとつだともいわれています。ビタミンDは食事からの摂取以外に、皮膚にあるコレステロールが紫外線に当たることで体内でも合成されます。そのため、日焼け止めをしっかり塗る人や、室内競技の選手は、特に食事から意識的にビタミンDを摂りましょう。
ビタミンDは、鮭やブリなどの魚に多く含まれているため、魚の缶詰や、スーパーやコンビニの魚の総菜も活用することで手軽に摂ることができます。また、激しい運動によって酸化ダメージを受けた筋のリカバリーには、ビタミン抗酸化力を持つビタミンA、C、Eを多く含む緑黄色野菜や果物(ビタミンCは柑橘系やキウイフルーツなどに特に多く含まれています)を摂ることが効果的です。これらを効率的に摂取するには、食事にプチトマトをプラスする、味噌汁や麺類にほうれん草をプラスするなどの方法がおすすめです。日々厳しいトレーニングをしている競技者の皆さんは、ぜひ食事から効率的なリカバリーを目指しましょう。

まとめ

本記事では、アスリートに不足しやすい栄養素を栄養素のはたらきと共に目的別に解説してきました。アスリートが食事からパフォーマンスの向上を目指すには、まず各栄養素がどのように自身のパフォーマンスやコンディションにつながるかを知ることが大切です。そして自身のパフォーマンスにおける課題や、コンディションチェックツールなどから見えてきた自身の食事・栄養の傾向をもとに、不足している栄養素が無いか、その栄養素を補うにはどのような食事を摂るとよいか、ということに向き合い、さらに高いパフォーマンスを目指しましょう!

小澤 智子(おざわ さとこ)/管理栄養士・株式会社ユーフォリア
管理栄養士として多くのプロアスリートやジュニア選手の身体組成評価・栄養サポートに従事する。2014年にはサッカー日本代表男子のコンディショニングサポートも担当し、現在はサッカー育成年代のチーム等にて栄養サポートを行っている。

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