素早い水分補給やエネルギー源補給に ～デキストリン入りハイポトニック飲料のススメ～

理想のスポーツ飲料

スポーツ飲料には、

・汗として失われた水分を補充すること
・消費したエネルギー源を補充すること

という2つの役割が求められます。
水分とエネルギー源である糖質は両方とも、腸に届いて初めて吸収され全身に届けることができます。

飲んだスポーツ飲料は、まず胃にためられます。皆さんの中にも水分を摂りすぎて、胃の中でポチャポチャしている感覚を経験したことがある方もいるのではないでしょうか。これは、胃に摂った水分がたまっているからです。先ほど説明したとおり、水分も糖分も腸に到達して初めて吸収されるため、これでは水分吸収もイマイチ、かつ運動パフォーマンスを低下させることにもつながってしまいます。
そこで「胃での滞留時間を短くすることで、腸で素早く吸収させること」が大切になってきます。

しかし、実は一般的なスポーツ飲料※の胃での滞留時間は短くありません。
（※500ml当たり200kcal、単・二糖類を主なエネルギー源とするドリンクを想定しています。）

今回は素早い胃から腸への送り出しを叶えるスポーツ飲料と、その工夫について、解説していきます。

素早い水分補給ができる「ハイポトニック飲料」とは

水分や糖分は腸で吸収されますが、そのためにはまず液体が胃を通過する必要があります。その通過が遅いとそれだけ水分の吸収も遅くなってしまいますが、ここでポイントとなるのが「浸透圧」※です。

私たちの身体にある体液にも浸透圧があり、約285mOsm/L（単位はミリ・オスモルと読みます）に調節されています。それよりも低い浸透圧に設定されている飲み物はハイポトニック飲料と呼ばれ、特に150 mOsm/L付近の浸透圧のものが、腸へ素早く送られることが分かっています。
実際に、さまざまな浸透圧の飲料を摂取した時に胃から腸に送り出される（胃排出といいます）までの時間を分析したグラフが、以下のものです。体液と同等の浸透圧（アイソトニック）となっている一般的なスポーツ飲料の胃排出が決して速いわけではないことがわかります。

TAKII, et al. International journal of sports medicine, 2005, 26.04: 314-319より改変しグラフを作成

また別の研究では、ハイポトニック飲料、グルコース飲料、真水を運動の直前に摂取した参加者たちに、胃の中に液体が残っている感覚を評価してもらったところ、ハイポトニック飲料を摂取した場合に胃の中に残っている感覚が最も少なくなることがわかりました。
（TAKII, et al. Food science and technology research 10.4 (2007): 428-431.）

先ほども触れましたが、胃での水分の滞留時間が短くなることは、「胃の中でポチャポチャしにくい」と感じるメリットにも繋がるのです。

※浸透圧とは
生体膜のような水分子などの一部の分子を通過させる膜で区切られた2つの液体の間には濃い方が薄い方の水分子を引き込もうとする力が働き、その力を浸透圧といいます。

水分と糖質の補給を両立した「ハイポトニック飲料」の工夫

ここまで紹介してきたハイポトニック飲料ですが、エネルギー源である糖質を十分に配合したものとするには、使用する糖類に工夫が必要です。
一般的には果糖ぶどう糖液糖が多く使用されていますが、この果糖ぶどう糖液糖を主な糖質源としてスポーツ飲料を設計すると、体液より浸透圧の高い飲料となってしまい、上で紹介したように吸収されにくくなってしまうのです。

そこで、糖質源にはデキストリンを使用します。デキストリンは1000個近くのブドウ糖が結合した巨大な1分子であり、浸透圧への影響がとても少ない物質です。さらに腸に届くとブドウ糖へと分解され、エネルギーとして利用できますから、ハイポトニックなスポーツ飲料にはうってつけの糖質源です。
つまり、デキストリンを活用すれば、多くの糖質を配合しても浸透圧を低くおさえることができますので、効率よく水分やエネルギー源を補給できるハイポトニック飲料をつくることができるわけです。

中でも、ハイポトニック飲料に使いやすいデキストリンとしては、CCD（高度分岐環状デキストリン：Highly-branched Cluster CycloDexrtinの頭文字を取ってCCDと呼ばれます）が挙げられます。デキストリンの中でも分子量が大きく水中での安定性が高いため、よく用いられるのです。

素早い水分と糖質の補給を可能にしたデキストリン含有のハイポトニック飲料は、あなたにとって理想のスポーツドリンクになるかもしれませんね。

※参考「クラスターデキストリン®」

まとめ

スポーツ飲料は水分と糖質を効率よく補給できることが理想です。
低い浸透圧のハイポトニック飲料は、お腹にたまりにくいのが特長です。
たくさんのブドウ糖が結合したデキストリンを活用することで、水分と十分な糖質が同時に補給できるハイポトニック飲料ができます。
運動を楽しむために、ハイポトニック飲料を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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参考文献：
・WILBURN, Dylan, et al. Highly Branched Cyclic Dextrin and its Ergogenic Effects in Athletes: A Brief Review. Journal of Exercise and Nutrition, 2021, 4.3.

・TAKII, H., et al. Fluids containing a highly branched cyclic dextrin influence the gastric emptying rate. International journal of sports medicine, 2005, 26.04: 314-319.

・TAKII, Hiroshi, et al. “A sports drink based on highly branched cyclic dextrin generates few gastrointestinal disorders in untrained men during bicycle exercise.” Food science and technology research 10.4 (2007): 428-431.

＜執筆者＞
江崎グリコ株式会社
健康イノベーション事業本部　
商品開発部　運動能力・脳機能強化商品開発グループ
研究担当　常盤颯志
資格：健康食品管理士／NESTA パワーサプリメントスペシャリスト