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構図と色、神戸の文化が隠し味。
Mateusz urbanowicz 僕は関東に移り住んでもう4年。なんとなくこちらの雰囲気に慣れてしまっていたけれど、この間、このイラストのロケハンのために神戸で3、4日過ごしたら、街を見る自分の視点が変わっていました。街自体も変わっていたり、港にKOBEって大きな文字のオブジェができていたり。けれど、今回描いたところは、ほとんど学生時代に何度も探検していたところなんですよ。
でも学生時代とは違って、今回は目的を持って、どういうシーンを描けばこの場所の魅力を見せられるか、頭の中でイメージして見ていました。

Mateusz urbanowicz あとは神戸はやっぱり、街に対する気持ちが違いますね。自分たちの住んでる街にプライドを持っているというか、この街をよくしようと思ったり、次はどうしようと悩んで、小さなところでも町おこししようとするのはとてもいいなと思います。改めて神戸に行って、自分がこの街にワクワクしてるのを感じました。
竹内 直行 それもあってか、神戸って古い建物が残っていたりするんですよ。東京では、すぐに壊されて大きなビルが建ったりするけど、神戸の北野や塩屋の周辺は、古い建物がしっかり保存されて使われている。古い建物が“いまだに、生きている”んです。
Mateusz urbanowicz わかります。須磨海岸に行くときに古い地下道を通りますが、別に怖くないし、近くを走る電車の音も聞こえていい感じ。ちゃんと使われて、手入れされていて、“愛情”を感じる。オリジナリティあふれる街なので、コピペ的な建物は建てないでほしいですね。
竹内 直行 マテウシュさんのお気に入りの景色は、どんなところ?
Mateusz urbanowicz 日本語を勉強してた頃、神戸大学の留学生センターというところに通っていました。その建物に行くためには、坂道を登らなくてはいけないんですけど。そこから、街全体を見下ろせるんです。あれはすごく面白かったし、変な話だけど、現実世界なのにどこかアニメっぽいんですよね(笑)。
あとは港も大好きなので、毎日山から歩いて、船がゆっくり行ったり来たりするところを眺めながら時間をつぶしてました。
天気のいい日は、淡路島が見えたりもして。それに最初に住んでいた灘の街の周辺も好きですね。博物館のあたりを散歩したり、夜の港を見ていると、風景を描きたくなる気持ちが膨らみました。
それに神戸は自然が豊かなので、時期によってかなり変化がありますよね。新宿のあたりを歩いても景色が変わらないけど、神戸を見ると、「山の色違うなぁ」とか(笑)
竹内 直行 そうですね、植物を見ると季節を感じられますよね。花も結構咲いているし。私も色を作るときに季節もイメージしていますよ。
学生のときに、日本国内いろんな街を旅して歩きましたけど、他の街と比べても神戸は色にあふれていて鮮やかでね。絵の具でいえば普通の街が12色だとしたら、神戸は24色あるってぐらい(笑)。
それに神戸って縦に長い街。少し歩けば山も海もあって。 山からは六甲山の風、海からも浜風が吹いてきて、街はちょうど風が交わる場所なんです。だから風通しがすごくよくて気持ちいいというか。感覚としてですが、風景がクリアに見えるんです。

Mateusz urbanowicz 僕も大学時代にアニメスタジオの見学で東京に行ったときは、神戸と全然空気が違うと思いました。今住んでいる湘南の方が神戸に近いなって思います。海が近いし。だから神戸も湘南も好きなのかもしれません(笑)。
竹内 直行 私も東京や大阪から出張で神戸に帰ると、駅に降りた瞬間、空気が全然違うのがわかります。
神戸の人って、本当に神戸好きが多いんですよね。神戸というひとつのブランドが大事にされる街かなと思います。もともと海外から来た人たちが発展させた街なので、「どうぞ仲間にお入りください」というような、開放的で、それでいて団結力も強い。そういう神戸人の気質はとても面白いと思う。「Kobe INK物語」が3色で終わらなかった理由も、神戸の人たちのバックアップがものすごく強かったから。
とにかく神戸愛がすごいんですよ。
Mateusz urbanowicz そう言われると、暑苦しい人たちなのかな、と思われがちだけど、全然めんどくさい人たちじゃないし(笑)。
神戸にきたとき、日本語はほとんど喋れなくて、生活していくのは大変だったけど、ムッとされたりはなかったから、本当によかったなと思います。
住み始めた当初は1年しか滞在しない予定だったのに、だんだん延びて結局3年半住んでました(笑)。アニメスタジオに入るために東京に移動したけど、神戸はよかったです。
竹内 直行 初めて飛び込んできた人に優しい街ですよね。