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色の合わせ調味料を作ります。

竹内 直行 今回のイラストには、「Kobe INK物語」の中から15色を使ってくださったと聞いたんですが、そのセレクトはどうやってされたんですか?

Mateusz urbanowicz 慎重に決めました。最初はインクをすべてスキャンして、いつも使ってるソフトに入れこみました。初めてのことだったので、何ができるかできないかもわからなかったから、ほぼ全ての混ぜ方を試したりして(笑)。2日くらいずっとラフを描いて、15色でいける!と思ったあたりから手描きで描きはじめました。
色を重ねても大丈夫か、ぼけるかぼけないか、どういう紙を使うかなどのテストも多かったのですが、紙やペンでまったく絵が変わってくるので、面白い体験でした。

竹内 直行 そうでしたか。

Mateusz urbanowicz ものを作るときは、頭の中で発酵させる必要があるんです。発酵ができる前に出すとあまりよくないし、発酵しすぎるのもよくないし。
タイミングが重要です。たまに、違う作品のために考えていたことが、発酵させていたものにポッと入って、ちょうどいいスパイスになることもあるので。これは試してもいいんじゃないかな?って、直感を大切にしています。

竹内 直行 私も色を作るとき、そういうことがありますね。

Mateusz urbanowicz 技術的には、赤・黄・青の基本色がないと、混ぜてもっと色を作りたいときに作れないので、なるべく冷静に選んだつもりですが、単に直感で素敵だと感じて選んだ色もあるんです。
例えば、「灘ブラウン」とか。もともと、ブラウンは好きだったし、自分が住んでいた街でもあったから(笑)。
「ブラウン」は、テーブルの色とかに使いましたね。薄めると色が変わって、彩度低めの肌色とかにもなるのですごく便利です。

「灘ブラウン」を水で薄めて色の変化を実践するマテウシュさん。

Mateusz urbanowicz 今回のイラスト制作では、水彩絵の具ではできないことをいくつか発見しました。特に、薄めて色を変化させるエフェクト!すごくビックリしました!これは水彩ではできないですね。
こういう新しいものを使う緊張感は好きです。逆に、慣れるとつまらなくなってしまうので、常に自分へ刺激を与えるようにしています。今回のオファーが来たときは、まだカラーインクでイラストを描いたことがなかったのでチャンスだと思いました。それに、ただどこかの店で買ったものじゃなく、ちゃんと思い出が入っているから、すごくワクワクしたし、気合いが入りました。

Mateusz urbanowicz でも実際に使ってみると難しかった。色を重ねると水彩とは違う重ね方ができるんです。レイヤーを重ねて、水彩みたいにぼけることもないし。あとはガラスペンと一緒に使うのは、水彩だと絶対にできないのでユニークでした。
特に薄めて使ってみると、水彩と全然違ってくるんです。いい答えを探しながらかなり集中しました。

竹内 直行 特にお気に入りの色はありますか?

Mateusz urbanowicz 「長田ブルー」や「渚ミュージアムグレー」はめちゃくちゃよく使いました!僕はもともと自分の絵であまり黒を使わないので、影をつけるために青とかグレーを使います。特に「渚ミュージアムグレー」は自分が毎日使っている万年筆に入れているぐらい好きです。

竹内 直行 いい色ですよね、私も想い入れがあって、とても慎重に作りました。

Mateusz urbanowicz だんだん薄めると、淡い青になるので、影とかのトーンを出すのにピッタリなんです。

竹内 直行 なるほどなぁ…。イラストに使われている色を見ると、やっぱり自分の神戸のイメージにオーバーラップしますね。

Mateusz urbanowicz 色が多ければもちろん、色々描けるけれど、混ぜたら使えるものもあるし、そこに好きな色をプラスして、今回のオリジナルの15色セットができました。使いやすかったですよ。

竹内 直行 そうやって言っていただけると、うれしいです(笑)。

Mateusz urbanowicz あと「五色山オークル」は、服とか肌とかいろんなところに使った色です。派手なオレンジ!っていうよりも落ち着いた深いオレンジで、薄めるとピンクも出てくる。
ほら!ただ使うとこの色なんだけど、水をちょっとかけるとピンクになるのね。普通の水彩だと急な変化がない。いっぱい活躍したなと思います。

「五色山オークル」の色の変化と水彩との違い。

竹内 直行 「五色山オークル」は作るのが難しかった色のひとつです。神戸の西地区にある前方後円墳「五色塚古墳」で出土した埴輪の色を表現しているんですよ。インクでは絶対に作らないような色なんですが、歴史のある色なんで作らないといけないという使命感で作りました。
神戸は無限大に色がある街だと思っているので、チャンスがあれば新しい色を作り続けたいです。

Mateusz urbanowicz あとは色の上に書いた鉛筆の線を後で消せるのは、水彩でずっと描いていた私にとってショックな体験でした。スケッチの上に色塗りして、好きなところだけに線を書けるなんて!水彩だと一発描きしないといけなかったので。
将来的に自分の作品の中で綺麗なグラデーションをやりたい所があれば「Kobe INK物語」を使いたいですね。