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神戸愛を、大さじいっぱい。

竹内 直行 マテウシュさんは、とても懐かしいようなあたたかいタッチで作品作りをされていますよね。私が作った「Kobe INK物語」を使って、どんな風に神戸の街を描いてもらえるか、ドキドキ楽しみにしながら待っていました。

Mateusz urbanowicz 私は楽しみでもあり不安でもあり…でしたね(笑)。

インクを使ってイラストを描くのも初めての経験でしたし、「Kobe INK物語」は市販されている絵の具と違って、色が生まれた場所の名前がそれぞれちゃんとついている。どこからこの色が来ているかわかるから、竹内さんがインクに込めた思いに答えられるかどうか、心配でした。

どんな思いで、このインクを作られたんですか?

竹内 直行 私はもともと神戸の街が大好きで、宝物だったんです。小、中学校くらいからカメラ片手にきれいな風景を探し歩くことが楽しみで。もう60年以上ですかね、細い路地など色々と、歩かないと出会えない景色を見てきました。

Mateusz urbanowicz 60年以上って、すごいですね。

竹内 直行 あとは、ペンとかインクとか文具が大好きで、自然と今の仕事に就きました。もう40年も前の話ですが(笑)。
入社してからずっと「神戸発の文房具を広く世に出そう!」という思いで試行錯誤していて、「いよいよ製品を出すぞ」っていうタイミングで、1995年の阪神淡路大震災が起きたんです。私が39歳のときでした。

竹内 直行かなりの被害を受けてしまって、それまで準備していたものが全部吹っ飛んでしまった。それから10年間、ひたすら後片付けの仕事をする日々で…。その間に東京の方を含め、たくさんの方々に優しくしていただきました。神戸の街がやっと元通りになってきた頃、それまでお世話になった人たちに手紙を書こうと思い立ったのが、「Kobe INK物語」を作るきっかけです。街を助けてもらったお礼の手紙なので、神戸らしいインクを考えないといけないと思って、最初の3色「六甲グリーン」「波止場ブルー」「旧居留地セピア」が生まれたんです。

竹内 直行この3色はそれぞれ、神戸の山の色と海の色、街の色をイメージしていて、 “神戸3原色”だと自分では思っています。最初は少しだけ作って、復興しつつある街の一角に置かせてもらっていたりしたのですが、お礼の手紙を送った方々から「これを販売してほしい、分けてほしい」という声をかなりいただけて。
それからは、1日もインクのことを考えなかった日はなくて。毎年6色ずつ12年間ずっと休まず出し続けて、今では72色まで増えました。1色作るたびにその地域で取材をしているのですがねぇ。8年くらいかかっているものもありますよ(笑)。どの色も、作るまでに最低でも1年はかかっているから、愛着がわきますよね。